戦略論　1994-1999　第2章　イノベーションのジレンマ

ベストセラーとなった『イノベーションのジレンマ』の出版前に「破壊的技術」の存在とそのメカニズムについて著者らが明らかにした、記念碑的論文です。


顧客の声に耳を傾け、それに従って製品や技術を改善する。これは、顧客満足からも、収益性や資源配分の効率性からも、そして業績評価とインセンティブという点でも理にかなっている。
しかし、ここにこそ落とし穴がある。
すなわち、主要顧客も価値を認めなければ、ニーズにも合致していない、しかも予想される売上げも市場規模も小さい新技術を無視した結果、これに賭けた新規参入者により、その新技術が生み出した市場のみならず、自分たちの牙城であった既存市場を奪われてしまうのである。
この失敗パターンは、とりわけハイテク市場においてよく見られる。
本稿は、ベストセラー『イノベーションのジレンマ』が上梓される前に、筆者らが「破壊的技術」の存在とそのメカニズムを明らかにした記念碑的論文である。なお、本稿の翻訳の初出は『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス』1995年7-8月号で、再掲載に当たって全面的な新訳を施した。