しじみ河岸

◆この作品について
　山本周五郎が描く、江戸の町奉行所を舞台にした人情ミステリー。若き吟味与力・花房律之助は、一人の娘が自白し解決済みとされた殺人事件に、直感から疑念を抱く。亡き父が過去に犯した誤審への償いを胸に、彼はたった一人で事件の再吟味に乗り出す。

　舞台は貧しい人々が暮らす「しじみ河岸」。住人たちは固く口を閉ざし、律之助の捜査は困難を極める。権力への不信、貧困が生む絶望、そして金で真実を捻じ曲げようとする者。律之助は、複雑に絡み合った人々の想いを解きほぐし、事件の裏に隠された悲しい真実にたどり着けるのか。正義とは何か、人を裁くことの重さを問いかける、周五郎ならではの傑作短編です。

・この動画の目次
0:00　しじみ河岸　一
8:26　しじみ河岸　二
16:41　しじみ河岸　三
25:19　しじみ河岸　四
38:38　しじみ河岸　五
47:41　しじみ河岸　六
56:05　しじみ河岸　七
1:04:47　しじみ河岸　八
1:14:04　しじみ河岸　九
1:23:49　しじみ河岸　十

◆主な登場人物
・花房 律之助（はなぶさ りつのすけ）
　物語の主人公。南町奉行所の新任吟味与力。亡き父の遺言を胸に、誤審を防ごうと強い正義感を持って職務に当たる。直感を頼りに、解決済みの事件の再調査に乗り出す。

・お絹（おきぬ）
　しじみ河岸に住む二十歳の娘。寝たきりの父と白痴の弟の面倒を見ている。卯之吉殺しの罪で自首するが、その裏には悲しい事情を抱えている。

・卯之吉（うのきち）
　殺害された左官職の青年。お絹とは将来を誓い合った仲だったとされる。

・高木 新左衛門（たかぎ しんざえもん）
　律之助の従兄で、町奉行所の先輩与力。律之助の行動を危ぶみながらも、その熱意を理解し、陰ながら協力する。

・相模屋 清太郎（さがみや せいたろう）
　しじみ河岸一帯の地主である大店「相模屋」の息子。事件の真犯人であり、金と権力で罪をもみ消そうとする。

・弥五（やご）
　しじみ河岸の老船番。貧しい者たちがなぜ役人に心を閉ざすのか、自らの経験を元に律之助に語る。

・直次郎（なおじろう）
　お絹の弟。幼い頃の怪我がもとで白痴となっている。彼の無邪気な言動が、律之助に事件解決のヒントを与える。