作品紹介
【日本近代文学名作選(45)】
夏目漱石(慶応3年 - 大正5年)による短編小説
「こんな夢を見た。和尚の室を退さがって、廊下伝いに自分の部屋へ帰ると行灯がぼんやり点っている。片膝を座蒲団の上に突いて、灯心を掻き立てたとき、花のような丁子がぱたりと朱塗の台に落ちた。同時に部屋がぱっと明かるくなった。襖の画は蕪村の筆である。黒い柳を濃く薄く、遠近とかいて、寒そうな漁夫が笠を傾けて土手の上を通る。床には海中文殊の軸が懸っている。焚き残した線香が暗い方でいまだに臭っている。広い寺だから森閑として、人気がない。」ーー
朗読:長尾奈奈
企画/制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
(C)2025 声の書店
夏目漱石(慶応3年 - 大正5年)による短編小説
「こんな夢を見た。和尚の室を退さがって、廊下伝いに自分の部屋へ帰ると行灯がぼんやり点っている。片膝を座蒲団の上に突いて、灯心を掻き立てたとき、花のような丁子がぱたりと朱塗の台に落ちた。同時に部屋がぱっと明かるくなった。襖の画は蕪村の筆である。黒い柳を濃く薄く、遠近とかいて、寒そうな漁夫が笠を傾けて土手の上を通る。床には海中文殊の軸が懸っている。焚き残した線香が暗い方でいまだに臭っている。広い寺だから森閑として、人気がない。」ーー
朗読:長尾奈奈
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