銭形平次捕物控　第廿七吉

◆あらすじ
　秋のある夕暮れ、岡っ引きの銭形平次は、部下の八五郎から不審な話を聞く。根岸の御隱殿裏で起きた用人・市太郎の殺害事件は、未だ犯人が判明せず、被害者の屋敷に仕える若い下女・お菊が毎日浅草観音へ詣でては、神籤を引き続けているという。

　お菊の神籤の引き方には奇妙な癖があり、八つに畳んだ神籤を粂の平内の格子に結んでいる。平次はそれに不自然さを感じ、監視を強めるが、お菊は何も気にせず日々の所作を続ける。

　捜査が進むと、事件は被害者・市太郎の息子・勝之助の証言から、奥方の浪乃と彼女に仕えるお菊が被害者の最期を隠し、事件の背後に悪人たちの陰謀があることが浮かび上がる。

　平次は悪党の正体を暴き、勝之助らと共に悪事を暴いていく。事件は解決し、真相が明らかになるが、隠された人間模様と義理が交錯する江戸の一幕であった。

◆解説
『錢形平次捕物控　第廿七吉』は、江戸時代の岡っ引きを主人公にした推理小説で、伝統的な捕物帳の形式で描かれている。事件の謎解きだけでなく、登場人物の人間関係や心情、江戸の庶民生活が生き生きと描かれている。

　本作では、神籤の謎や下女・お菊の挙動の意味が事件のカギとなり、巧妙なトリックと人物描写が読者を惹きつける。江戸の町の生活感や岡っ引きの捜査手法、義理や人情も重要なテーマとなっている。

◆登場人物リスト
銭形平次
　江戸町奉行所の岡っ引き。機知に富み、人情味ある性格で難事件を解決する。

八五郎（ガラツ八）
平次の子分。馬鹿正直で純情、平次を慕っている。

お菊
根岸の御隱殿裏の屋敷に仕える若い下女。事件の謎に深く関わる人物。

浪乃
お菊の主である奥方。陰気ながら品格を備え、苦難の中で強く生きる。

進藤勝之助
殺された市太郎の息子。苦悩しつつも真実を求めて平次に協力する若武士。

市太郎
被害者の用人。物語の鍵を握る人物であり、事件の真相に大きく関わる。

久野將監
市太郎の主で長崎奉行。事件の背景にある権力闘争の中心。

三輪萬七
土地の御用聞き。捜査の協力者。