改訂御定法

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　藩法改正に異議を唱えて左遷された中所直衛。巨額の借財訴訟を巡って商人 VS 武士の利害が激突するなか、直衛は白洲で知略と剣を振るい、武士の名誉と新定法の矛盾を洗い出す。ラストは壮絶な切腹に託された覚悟が胸を打つ。

・ あらすじ（詳細）

　御定法改訂で家中が揺れる羽州某藩。改定反対派筆頭だった中所直衛は筆頭家老候補から左遷され、藩史編纂所頭取に甘んじていた。そんな折、幼馴染で再婚話の進む河本佳奈との再会が日々の慰めとなっていた。

　一方、豪商・要屋喜四郎は、藩士・矢堂玄蕃が百八十両余の借金を踏み倒したと訴え出る。町奉行で佳奈の兄・宗兵衛は、新法に則り玄蕃に「詰腹」で事態を収めようとするが、直衛はこの裁きに異議を唱え、藩主の命により臨時奉行に任命される。

　直衛は白洲に立ち、三十日以上にもわたって詳細な吟味と帳簿精査を行い、要屋の背後に潜む高利貸しと訴訟誘導の策略を暴いていく。

山本周五郎流　御白洲サスペンス！

・ 解説：改訂御定法と史実との比較

作中の御定法改訂は、商人から武士への訴訟を可能とするなど「下からの告発を容認する改革」だが、運用次第で悪用される危険性も孕む。

史実では、江戸後期の**寛政異学の禁（1790）や天保改革（1840年代）**で、法の見直しと社会規範の統制が進行。

商人と武士の立場逆転、経済力の逆転は現実にもあり、「武士は食わねど…」の価値観が揺らぎつつあった。

山本周五郎はそれらの矛盾を“時代小説”で仮託し、「生きた法とは何か」を問うた。

・ 登場人物リスト

・中所直衛

主人公。剣と弁舌に優れた元家老候補。正義と信念の人。

・河本佳奈

直衛の幼馴染。聡明な未亡人。直衛との祝言が控える。

・河本宗兵衛

佳奈の兄。町奉行。新法運用と面目の板挟みに悩む。

・矢堂玄蕃

若侍。放埓で借財を抱え、要屋に訴えられる。

・要屋喜四郎

豪商。裏で高利貸しを仕掛け、御定法を盾に武士を責める。

・朝倉摂津

老城代。改革派の上司。直衛の能力を見守る。



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