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酔いどれ次郎八

出版社 丸竹書房

ナレーター七味春五郎

再生時間 00:49:08

添付資料 なし

販売開始日 2025/8/1

トラック数 9

作品紹介

1938年(昭和13年)8月 『冨士』掲載作品

 播磨国龍野藩の武士、矢作次郎八とその親友・岡田千久馬の友情と、許嫁ゆき江をめぐる悲しい運命を描いた物語です。
 主君の命を受け、薩摩藩に逃れた仇を討つという大任を背負った二人。苦難の末に本懐を遂げるも、その後の運命は彼らを過酷な試練へと導きます。友と恋人の幸せのために、自ら「酔いどれ」の汚名を着て身を引く次郎八の自己犠牲の精神を通して、武士の生き様、友情、そして愛の真髄を問う、感動的な作品です。

■あらすじ
 奪われた名刀を追って、薩摩に潜入した友人二人。次郎八は千久馬を逃がすために、一人行方知れずとなる。それが悲劇の始まりであった……

 見事宝刀を奪還した次郎八と千久馬だが、薩摩藩の捕り手におわれ、脱出をはばまれる。次郎八は親友千久馬を逃すために一人敵陣に残るのであった。

作中で「由来薩摩は境戒が厳しく、幕府の隠密でさえ入国する事の困難をもって有名である」と描かれている通り、江戸時代の薩摩藩(島津家)が他藩に対して非常に排他的・閉鎖的な姿勢をとっていたことは史実としてよく知られています。

これにはいくつかの理由が挙げられます。

地理的要因:日本の南西端に位置し、中央の権力から距離があったこと。
密貿易の維持:幕府の禁令下で琉球(実質的な支配下)を通じた中国などとの密貿易を行っており、その秘密を守るため、外部の人間の立ち入りを厳しく制限する必要がありました。
独自の軍事・統治体制:「外城制度」といった独自の地方支配体制や、藩内に多くの兵力を保持していたため、幕府の監視や介入を極力避けたかったという背景があります。
これらの理由から、薩摩藩は街道の関所を厳しくし、他藩の者が領内に入ることを非常に困難にしていました。物語の中で次郎八たちが潜入に三年の歳月を要したという設定は、こうした史実を背景にしたものであり、彼らの任務の困難さを際立たせるための説得力のある描写となっています。


■登場人物
矢作次郎八……播磨国竜野藩士。藩の名刀を奪った侍を上意討ちするため、千久馬と二人で後を追う。
岡田千久馬……次郎八の友。次郎八から、弟のように愛されている。
森井欣之助……次郎八、千久馬の友。
ゆき江……茅野総造の娘。次郎八の許婚であったが、千久馬と相思相愛となる。
杉原喜兵衛……重右衛門を斬り薩摩藩に逃げた。

■用語集
踪跡(そうせき)……足跡。あとかた。
陥穽(かんせい)……人を陥れるための策略。わな。
脾腹(ひばら)……横腹。脇腹。
刀架(とうか)……かたなかけ
手燭(てしょく)……手にもつ燈。
疑惧(ぎぐ)……うたがいおそれること。ぎく。
刎頸(ふんけい)……首を切られても悔いのないほど、したして交わり。
賞揚(しょうよう)……ほめたたえること。
爛酔(らんすい)……泥酔。
慮外(りょがい)……無礼であること。ぶしつけ。
総角(あげまき)……子どもの髪型
破恋(はれん)……恋に破れること。
久闊(きゅうかつ)……久しくあわないこと。
盃洗(はいせん)……酒席でやりとりする杯を洗いすすぐための器。
酔歩(すいほ)……酒に酔ってふらふらしながら歩くこと。
蹣跚(まんさん)……足下がよろめく様。
孤灯(ことう)……一つだけと持っている灯火。

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