作品紹介
【小学館の名作文芸朗読】
今年三十八になる私は初めて父の墓を訪れる。二十年前、父は私と同じ年齢の時に、この九州の野で国のために死んだのだ。横手村で墓守をする老爺に官軍改修墓地まで案内され、ようやく父の墓を探し出す。父が戦死してから、祖父母も母も兄も苦痛を抱えながら死んでいった。私も絶望が絶望に続き、苦痛が苦痛に続いた。その絶望と苦痛のうちで、私は人の夫となり、人の親となった。私は父のことより、自分と妻と児に思いを馳せていた。
今年三十八になる私は初めて父の墓を訪れる。二十年前、父は私と同じ年齢の時に、この九州の野で国のために死んだのだ。横手村で墓守をする老爺に官軍改修墓地まで案内され、ようやく父の墓を探し出す。父が戦死してから、祖父母も母も兄も苦痛を抱えながら死んでいった。私も絶望が絶望に続き、苦痛が苦痛に続いた。その絶望と苦痛のうちで、私は人の夫となり、人の親となった。私は父のことより、自分と妻と児に思いを馳せていた。
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