作品紹介
■あらすじ・解説
名君として知られる徳川光圀(水戸黄門)のもとへ、奥州浪人・五百旗(いおき)五郎兵衛が仕官を乞いにやってくる。貧しくとも芯の通った武士と見えたが、光圀は一見しただけで門前払い。それを恥じた五郎兵衛は、水戸の屋敷の庭先であっさりと自刃してしまう。
父が死んだ後、母や幼い子・小次郎は水戸の荒地・千波ヶ原に身を寄せ、開墾に励みながら“水戸藩に仕える武士”と心に誓っていた。成長した小次郎は「五百旗五郎兵衛」と名を継ぎ、人知れず光圀の行列を密かに傍付き、己こそ真の家臣と心得る日々を送る。
やがて年貢増徴を狙う豪農との争いによって母が捕らえられ、「偽りの水戸家臣」と訴えられた五郎兵衛も糾明を受けるが、そこには十六年前の“痛恨の記憶”が横たわっていた……
山本周五郎らしい深い人情と武士道の葛藤が織りなす短編。ひたむきに“水戸黄門”に仕えようとする親子の姿が、最後には徳川光圀の胸を打ち、物語に清々しい結末をもたらします。
■登場人物一覧
・五百旗 五郎兵衛(いおき ごろべえ)〈父〉
奥州浪人。貧苦の身ながら徳川光圀をこそ“生涯の主君”と心から崇め、意を決して水戸へ。しかし志が届かず、自ら命を絶ってしまう。
・五百旗 やす(いおき やす)〈母〉
五郎兵衛の妻。夫の死後、幼子を連れて水戸の荒地・千波ヶ原で開墾に尽くす。誇り高くも穏やかな気性。
・五百旗 五郎兵衛(二代目)〈息子・小次郎〉
8歳の頃に父を失うが、「父の遺志を継ぐ」として光圀を主君と心に誓う。農業を拓きながら武士としての気概を秘めて成長していく。
・徳川 光圀(とくがわ みつくに)
水戸藩主(二代目)。名高い名君だが、若い頃のある“過ち”が、十六年後に知らず知らず五百旗家親子の運命を左右することに。
・鈴木 主税(すずき ちから)
光圀の執事。仕官を乞う浪人への対応に追われており、五百旗五郎兵衛〈父〉の覚悟を察し損ねてしまう。
・井野 甚四郎(いの じんしろう)
代官。年貢や領内の訴訟を取り仕切るが、五郎兵衛〈息子〉の件で不可解な事態に見舞われ、裁きの場で光圀の出馬を仰ぐ。
・くるまや 六造(ろくぞう)
千波ヶ原一帯の地主。かつて荒地だった土地を開墾した五百旗らに年貢増徴を迫り、母子を窮地に追い込む。
名君として知られる徳川光圀(水戸黄門)のもとへ、奥州浪人・五百旗(いおき)五郎兵衛が仕官を乞いにやってくる。貧しくとも芯の通った武士と見えたが、光圀は一見しただけで門前払い。それを恥じた五郎兵衛は、水戸の屋敷の庭先であっさりと自刃してしまう。
父が死んだ後、母や幼い子・小次郎は水戸の荒地・千波ヶ原に身を寄せ、開墾に励みながら“水戸藩に仕える武士”と心に誓っていた。成長した小次郎は「五百旗五郎兵衛」と名を継ぎ、人知れず光圀の行列を密かに傍付き、己こそ真の家臣と心得る日々を送る。
やがて年貢増徴を狙う豪農との争いによって母が捕らえられ、「偽りの水戸家臣」と訴えられた五郎兵衛も糾明を受けるが、そこには十六年前の“痛恨の記憶”が横たわっていた……
山本周五郎らしい深い人情と武士道の葛藤が織りなす短編。ひたむきに“水戸黄門”に仕えようとする親子の姿が、最後には徳川光圀の胸を打ち、物語に清々しい結末をもたらします。
■登場人物一覧
・五百旗 五郎兵衛(いおき ごろべえ)〈父〉
奥州浪人。貧苦の身ながら徳川光圀をこそ“生涯の主君”と心から崇め、意を決して水戸へ。しかし志が届かず、自ら命を絶ってしまう。
・五百旗 やす(いおき やす)〈母〉
五郎兵衛の妻。夫の死後、幼子を連れて水戸の荒地・千波ヶ原で開墾に尽くす。誇り高くも穏やかな気性。
・五百旗 五郎兵衛(二代目)〈息子・小次郎〉
8歳の頃に父を失うが、「父の遺志を継ぐ」として光圀を主君と心に誓う。農業を拓きながら武士としての気概を秘めて成長していく。
・徳川 光圀(とくがわ みつくに)
水戸藩主(二代目)。名高い名君だが、若い頃のある“過ち”が、十六年後に知らず知らず五百旗家親子の運命を左右することに。
・鈴木 主税(すずき ちから)
光圀の執事。仕官を乞う浪人への対応に追われており、五百旗五郎兵衛〈父〉の覚悟を察し損ねてしまう。
・井野 甚四郎(いの じんしろう)
代官。年貢や領内の訴訟を取り仕切るが、五郎兵衛〈息子〉の件で不可解な事態に見舞われ、裁きの場で光圀の出馬を仰ぐ。
・くるまや 六造(ろくぞう)
千波ヶ原一帯の地主。かつて荒地だった土地を開墾した五百旗らに年貢増徴を迫り、母子を窮地に追い込む。
新着作品
週間総合ランキング
読み込み中...

