
聴き放題対象
チケット対象
刺青(日本近代文学名作選27)
ナレーター長尾奈奈
再生時間 00:21:33
添付資料 なし
販売開始日 2025/4/1
トラック数 1
購入音源の倍速版 なし(アプリでの倍速再生は可能です)
Audio Player
作品紹介
【日本近代文学名作選(27)】
谷崎潤一郎(明治19年 - 昭和40年)による短編小説
「其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様や若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や華魁の笑いの種が盡きぬようにと、饒舌を売るお茶坊主だの幇間だのと云う職業が、立派に存在して行けた程、世間がのんびりして居た時分であった。女定九郎、女自雷也、女鳴神、―――当時の芝居でも草双紙でも、すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。芳烈な、或は絢爛な、線と色とが其の頃の人々の肌に躍った。 馬道を通うお客は、見事な刺青のある駕籠舁を選んで乗った。吉原、辰巳の女も美しい刺青の男に惚れた。博徒、鳶の者はもとより、町人から稀には侍なども入墨をした。時々両国で催される刺青会では参会者おの/\肌を叩いて、互に奇抜な意匠を誇り合い、評しあった。」ーー
朗読:長尾奈奈
企画/制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
(C)2025 声の書店.
谷崎潤一郎(明治19年 - 昭和40年)による短編小説
「其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様や若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や華魁の笑いの種が盡きぬようにと、饒舌を売るお茶坊主だの幇間だのと云う職業が、立派に存在して行けた程、世間がのんびりして居た時分であった。女定九郎、女自雷也、女鳴神、―――当時の芝居でも草双紙でも、すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。芳烈な、或は絢爛な、線と色とが其の頃の人々の肌に躍った。 馬道を通うお客は、見事な刺青のある駕籠舁を選んで乗った。吉原、辰巳の女も美しい刺青の男に惚れた。博徒、鳶の者はもとより、町人から稀には侍なども入墨をした。時々両国で催される刺青会では参会者おの/\肌を叩いて、互に奇抜な意匠を誇り合い、評しあった。」ーー
朗読:長尾奈奈
企画/制作:声の書店
協力:株式会社 仕事
(C)2025 声の書店.
新着作品
週間総合ランキング
読み込み中...