風車

■あらすじ
　金之助は、家柄も才能もありながらも気楽に生きていたが、おつゆの献身と助言によって自らの未熟さに気づき、成長していく物語
　金之助は叔父の仕送りでのんびりと暮らしており、浪人たちにたかられる生活をしている。
　仕官先を探すも、二百石以上の待遇でなければ納得せず、特に行動を起こさない。
　彼を支えるおつゆは、影ながら生活を管理し、無駄遣いを防いでいる。

　二人の生活はこんな塩梅で、おつゆは金之助に崇拝に近い心情をいだいている。金之助は気象のさっぱりした人間だけに、自分も他人の心象にもあまり頓着していない。果たして、二人の恋の行く末は？


■主要登場人物
・梶原金之助
　大坂の与力の次男、江戸に出てこの二年間仕官口を探している。
　剣術に秀で、学問も優れている。坊ちゃん育ちでのんびりとした性格。
　叔父の仕送りで生活し、金銭感覚が甘く、浪人たちにたかられることが多い。

・おつゆ
　長屋の家主の亡妻の妹で、金之助の身の回りの世話をする女性。
　美しいが控えめな性格で、人前に出ることを避けているため、金之助もその美しさに気づかない。
　聡明で、金之助の未熟さを見抜き、叔父からの仕送りを断つという決断をする。

・松姫
　信濃国四万八千石の大名の姫。
　家督争いの渦中にあり、敵対勢力から命を狙われている。

・椙井勝三
　金之助の知人


■用語集
訥々……トツトツ・口ごもって、つっかえながら云う
篤実……トクジツ・情が深く誠実なこと。
背戸……セド・家の裏手。または家の裏口
嬌嬌……キョウキョウ。あでやか。なまめかしい。
別墅……ベッショ・別荘。別邸。
嬌声……キョウセイ・女性の、こびを含んだなまめかしい声。
手活……テイケ・花を生けること
意力……イリョク・意思の力。精神力。
馳走……チソウ・奔走
宿直……トノイ・とまりこみ、夜の警備に当たること
奸賊……カンゾク・憎むべき悪者
局口……ツボネグチ・局の出入り口
兇漢……キョウカン・人に危害を加える悪者。
敢然……カンゼン・困難や危険を伴うことは覚悟の上で、思い切って行う様
妾腹……ショウフク・妾の腹からうまれたこと
騒擾……ソウジョウ・騒乱。集団で騒ぎを起こし、社会の秩序を乱すこと
弑殺……シサツ・家臣が主君を殺すこと
随身……ズイジン・付き従っていくこと
因業……インゴウ・頑固で思いやりのないこと
瑞祥……ズイショウ・めでたいことが起こるという前兆
滂沱……ボウダ・涙が止めどもなく流れ出る様