喧嘩主従

１９３８年(昭和１３年)３月　『婦人倶楽部増刊号』
　日本一の頑固主従！　ということで、Audible納品用に再録しております。

　池田光政は、初期の山本作品にいくたびか登場なさりますが、名君の元には多くの名臣があつまるようで、青地小平太もその一人。

　武芸の達人だが、諫言をくりかえす小平太

　主君の光政とも毎日いがみ合いをしている

　そんな小平太のことを婚約者の双葉はこころよくおもっていないが……



■登場人物紹介
青地小平太……光政の近臣。
楳本主膳……大番頭。双葉の父。
双葉……主膳の娘。小平太の許婚者だが、遠慮なく批判する。
池田光政……因幡鳥取の城主。家来の意見をよく聞く名君。
児二郎……光政の小姓。


■用語集
横紙破り……ヨコガミヤブリ・他人の意見を聞かず、自分の考えを無理に押し通すこと。わがままで自己中心的な振る舞いを指す。

諫言……カンゲン・目上の人に対して忠告すること。特に、主君や上司に対して間違いや誤りを正すように勧めること。

直諫……チョッカン・上位の人に対して率直に意見を述べて諫めること。遠回しでなく、直接的に諫言することを意味する。

恐懼……キョウク・非常に恐れている状態。恐怖や畏れで身が縮むような気持ちを表す。

御簾……ミス・貴人の前に垂らす布や竹で編んだ垂れ幕。特に、天皇や皇族などの目隠しとして用いられる。

膂力……リョリョク・筋力や体力。特に、腕力や体の力が強いことを意味する。

景勝……ケイショウ・風景が美しいこと。特に、名勝地や絶景と呼ばれる場所を指す。

転封……テンポウ・封建時代に、領地を移されること。特に、大名が他の領地に移動させられることを指す。

落魄……ラクハク・落ちぶれて気力を失った状態。かつての栄華を失い、困窮した様子を意味する。

蒼惶……ソウコウ・非常に慌てている様子。予期せぬ出来事に動揺し、落ち着かない状態。

移封……イホウ・領地を別の場所に移すこと。特に、大名が新しい領地に配置換えされることを指す。

拝揖……ハイユウ・深く礼をして頭を下げること。また、相手に対する敬意を込めた挨拶としての礼儀。

後架……コウカ・古風な表現で、トイレや便所のこと。

牢窮……ロウキュウ・困難で厳しい境遇や、貧困の中にあることを意味する。

慚愧……ザンキ・自分の過ちや未熟さを恥じること。後悔や羞恥心を抱く心の状態を表す。

粗略……ソリャク・丁寧さを欠いた粗雑な扱い。人や物事に対して敬意や配慮がなく、いい加減な対応をすること。