はたし状

幼い頃からほれていたしのとの婚約を喜んでいたのもつかの間

江戸にいる間に婚約は破棄され、第二は失意の底に沈むこととなった

裏切ったのは、彼の親友である……



「本当に小説らしい小説が書けるようになったのは、昭和二十四、五年の頃からだった」
　という山本周五郎の言葉通り、昭和二十六年に発表された本書は、登場人物の心の機微を描き、日本の原風景をうつした傑作短編となっております。

■登場人物紹介
今泉　第二……寄合番頭。江戸に行っている間に、婚約を破棄される。
和田　しの……軍兵衛の長女。第二の許婚者。
和田軍兵衛……しのの父。第二の伯父。
藤島英之助……第二の親友。しのの夫となる。
八木千久馬……第二の友人。しのの従兄妹。
み　よ　　……しのの妹。
加　世　　……しのの母。
和田又之助……しのの兄。
和田小三郎……しのの次兄。

■用語集
学堂……ガクドウ・学校
兄事……ケイジ・兄に対するように、敬意と親愛の気持ちを持ってつかえること
特旨……トクシ・君主のおぼしめし
哀訴……アイソ・哀願。
狷介……ケンカイ・頑固で自分の信じるところを固く守り、他人に心を開こうとしないこと
往還……オウカン・主要な道路