菊月夜

■１９４４年(昭和１９年)１０月　『講談雑誌』

数年ぶりに帰藩した新三郎。

周囲は彼に隠れて縁談を画策するが、それには裏の事情があった。

藩政を牛耳る高力忠左衛門の汚職。

高力を誅するために否応なく巻き込まれていく新三郎。

また政権内に入るために政略結婚をすることになるが、彼には忘れられぬ、元・許嫁があった。

その婚約者は父親の乱心のために、藩を追われてしまったのだが、そこには意外な事実が隠されていて……

山本周五郎戦前の名作

お聴きください。


■登場人物
佐垣信三郎……国許に帰国後、綾子と結婚、忠左衛門の不正を暴く。
疋田絢子……兵庫助の娘。信三郎の妻。
小房……権太夫の娘。信三郎の許婚者。父の死後追放され行方不明になる。
高力忠左衛門……重臣。藩政を私し暴政を行っている。
松谷権太夫……納戸奉行。発狂し城内で斬られる。

佐垣藤左衛門……郡代。信三郎の父。
佐垣市九郎……書院番。信三郎の兄。
安倍孫太夫……奉行役所支配。忠左衛門の秕政の証拠を探ろうとする。
疋田兵庫助……重職。
酒井忠義……藩主。
酒井摂津守忠当……先代藩主。


■用語集
郡代……グンダイ・ 江戸時代では勘定(かんじょう)奉行支配下にあって民政一般
怜悧……レイリ・頭がよく、りこうなこと。
犀利……サイリ・文章の勢いや頭の働きが鋭いこと。また、真実を鋭くついているさま。
華燭……カショク・（結婚式の席上の）華やかなともしび。
秕政……ヒセイ・よくない政治。悪政。
私曲……シキョク・公正でないこと。不正。
奸曲……カンキョク・心に悪だくみがあること。 また、その人や、そのさま。
頤使……イシ・いばって、人を使うこと。頤(あご)で使うこと。
久闊……キュウカツ・長らく音信をしないこと。無沙汰(ぶさた)。