作品紹介
「先生が憎い。――こんなに、わたし好きになってゐるのに、本当に解つてくれないッ。」
と、花枝は、髪の乱れた額で、先方の胸倉をこづくようであつた。
「そんなことがあるものか。重々、ありがたいと思つてゐる。」――
小田原の物置部屋で作家活動をする竹七と、夫が書いた作品を見てもらうため、ときおり竹七の元を訪れていた花枝。うだつの上がらない初老の作家と、2人の子を持つ25歳の人妻が、いつしか互いに離れられない関係になり――。
前後して発表された『抹香町』とともに著者の出世作となった、これぞ私小説といえる逸作。
(C)Chotaro Kawasaki 2022 (P)小学館
と、花枝は、髪の乱れた額で、先方の胸倉をこづくようであつた。
「そんなことがあるものか。重々、ありがたいと思つてゐる。」――
小田原の物置部屋で作家活動をする竹七と、夫が書いた作品を見てもらうため、ときおり竹七の元を訪れていた花枝。うだつの上がらない初老の作家と、2人の子を持つ25歳の人妻が、いつしか互いに離れられない関係になり――。
前後して発表された『抹香町』とともに著者の出世作となった、これぞ私小説といえる逸作。
(C)Chotaro Kawasaki 2022 (P)小学館
新着作品
週間総合ランキング
読み込み中...