上野介正信

１９４８年(昭和２３年)６月　『小説新潮』
　堀田家の庭番茂助は、四十をすぎたばかりだが、周囲から「じいさん」と呼ばれていた。どうやら訳ありのこの男、上野介の殿様に妙に気に入られて……
　殿様と庭番の友情とわかれを描いた山本周五郎の傑作短編です。
　

■登場人物
上野介正信……堀田佐倉藩の藩主。
茂　　助　……堀田家の庭番。正信を崇拝する。
市　兵　衛……茂助の甥。植木職。
お　　直　……市兵衛の女房。
源　　助　……茂助の兄。
お　　菊　……茂助の女房。


■用語集
究竟……クッキョウ・非常に好都合なこと。あつらえむきなこと。
連枝……レンシ・貴人のきょうだい。
奢侈……シャシ・必要な程度や身分を越えたぜいたく。
隠逸……インイツ・俗世間の煩わしさから身を隠し、みずからよしとする暮し方をすること。その人。
謫居……タッキョ・流罪になって、その地に住むこと。