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柳橋物語

出版社 丸竹書房

ナレーター七味春五郎

再生時間 05:50:46

添付資料 なし

販売開始日 2024/3/25

トラック数 25

購入音源の倍速版 なし(アプリでの倍速再生は可能です)

作品紹介

■柳橋物語
1946年(昭和21年)7月 山本周五郎一人雑誌『椿』創刊号に前編が掲載され、1949年(昭和24年)1月~3月 『新青年』に前編を再掲載。中・後編を掲載。
 震災にみまわれた江戸の町を、噂に袋叩きにあいながらも、乳飲み子を抱えてたくましく生きる、娘おせんの姿を描いた愛と悲しみの物語。女の強さと、下町の人情を存分に描いた、山本周五郎の傑作中編。


■「むかしも今も」は、こちらから。
第一話はこちらです→https://youtu.be/XEadUG2akF0
第二話はこちらです→https://youtu.be/6KQPPy1JFXk
第三話はこちらです→https://youtu.be/l2OoRZtJeMs


■時代背景、忠臣蔵と、災害。
 作中、赤穂浪士の討ち入りがたびだび話題にのぼります。
○吉川英治の忠臣蔵
前篇→ https://youtu.be/UGFYWTl7QJc
後編→https://youtu.be/DS1Xiq6zzBQ 

 ということは、作品の舞台は元禄の終わり(大石らの切腹は二月)。年号は、宝永へとかわっていきます。当時元禄十六年の十一月(西暦では十二月三十一日)に実際に大地震があり、周五郎先生これを採用したものと思われます。(その後の宝永年間も巨大地震、噴火が続発)
 おせんが経験したのは、元禄大地震、江戸期の関東大震災とも呼ばれる大きな物でした(江戸では被害は軽微)。その六日後の火災も史実で、被害が大きくなりました。十一月から二月にかけて、江戸では大火が起こりやすく、地震の復興のさまたげとなりました。幕府では、「犬扶持(犬の食費)」の徴収をやめ、上納されていた銀子も、半年分返却、復興の資金に充てました。最初からとるなよ、とも思いますが……

■山本周五郎の被災
 山本作品には、地震や火事がつきもの。それもそのはずで、この人、
生まれて四年目には、山津波で祖父母や叔父叔母をなくしております。周五郎が助かったのは、別居していたためで、東京横浜へと居をうつしていくことになります。(山梨生まれですが、本人が江戸っ子を自称するのはそのため)
 横浜の小学校を卒業すると、東京木挽町にあった質店「きねや」に奉公にだされます。にぎわい橋のたもとにあって、銀座界隈で名の知られた大店。店主は同名の「山本周五郎」雅号に「洒落斎」をもつ粋人で、若き周五郎にとって、父親でもあり、師匠のようなそんざいともなりました。そんな中で起こったのが「関東大震災」きねやも被災して、店舗は閉鎖。周五郎は、きねやを辞めて、関西へと流れていくことになります。周五郎、20才のときのお話でした。関東から関西へ避難民が流れたのは、周五郎一人ではなく、当時は「トウキョウノヒナンミン」とも呼ばれたそうで、周五郎先生も、そんな「ヒナンミン」の一人だったというわけです。
 というわけで、ヒナンミンシュウゴロウ、いよいよ本格的な文学修行に乗り出します。このときの神戸での経験を踏まえて描かれたのが「須磨寺付近」わたくしまだ読んでおりませんが、ご要望あれば朗読いたします。

■周五郎と戦争
 話がそれましたが。
 青ベか時代をへて、蒸気河岸の先生
○青ベか物語
前篇→ https://www.youtube.com/watch?v=NLKu2osoGj8
後編→ https://www.youtube.com/watch?v=LORtGwEwDTw

は、東京にもどってまいります。そこで、巻き起こるのが、第二次世界大戦最中の東京大空襲。こうして、火災というのものが、周五郎の血肉に深く食い込んでいくことになるのでした。
 狷介固陋、頑固一徹、へそ曲がりじいさん――山本曲軒の性格の一端は、そんなところにも由来するのかも……


■登場人物
おせん……上方へ行く庄吉と夫婦約束をする。
幸太郎……おせんが大火の最中拾った男の子。
源六……おせんの祖父。研師。「柏屋源六」主。
茂七……髪結い。おせんの父。
母……おせんの母。巳之吉との縁談を断り、茂七の女房となる。

庄吉……おせんの幼馴染の大工。
幸太……おせんの幼馴染の大工。
巳之吉……大工「杉田屋」の頭梁。おせんを可愛がる。
お蝶……巳之吉の女房。おせんを養女にと望む。

勘十……藁屋。大火で記憶を失ったおせんを助ける。
お常……勘十の女房。おせんを親身になって助ける。
松造……お常の兄。無愛想ながらおせん達の面倒をみる。
友助……材木問屋「梶平」の雇い人。勘十の友人。
久兵衛……「梶平」の主人。
和助……友助の子。大火後のおせんを助力する。
おたか……和助の女房。おせんの助力をする。

おもん……油屋の娘。おせんの親友。
権二郎……飛脚「山崎屋」の雇い人。
定五郎……「杉田屋」にいた老人。
久造……源六の研師仲間。
おらく……魚屋の女房。おせんの長屋の裏の住人。
よね……おせんの針師匠。

松造……「杉田屋」の雇い人。
おいく……松造の女房。
お鶴……松造とおいくの養女。

お勘……舟八百屋の女房。大火後のおせんと同じ町内に住む。
和泉杏順……医師。
お花……おせん、おもんの針仲間。
お喜多……おせん、おもんの針仲間。
おもと……おせん、おもんの針仲間。
絹……おせん、おもんの針仲間。
およう……おせん、おもんの針仲間。
加代……大工「山形屋」の頭梁の娘。庄吉の嫁。



■用語集
○前篇
荷足……ニタリ・荷足船の略。川の運送でつかう、小さな船
下風……カフウ・他の支配を受ける低い地位
諸式……ショシキ・物価
独活……ウド・ウコギ科の多年草。若芽やわらかく、香りがあるので、栽培もされる。
風霜……フウソウ・年月、歳月。世の中の厳しい苦難や試練。
名跡……ミョウセキ・代々受け継がれていく家名。
しっこし……度胸。意気地。根性。
昼食……チュウジキ
状……ジョウ・手紙。書状。しらせ
暑気……アツケ・夏の暑さ。しょきあたり。暑さのタメ病気になること。
萌芽……ホウガ・物事の起こる兆し
こはぜ……足袋、手甲、脚絆などにつけた爪形の留め具。
荷葉飯……カヨウメシ・水に浸した餅米を、蓮の葉をかさねたセイロで長時間蒸した物。
刺し鯖……背開きの塩鯖二尾をかさねて、頭のところで刺し連ねて一刺しにした物。
後架……トイレ
凜寒……リンカン・山本周五郎の造語か?
定命……ジョウミョウ・前世の因縁できまる、人の寿命。
刺し子……綿布を重ね合わせて、細かく刺し縫いした丈夫な物。柔道着、剣道着などに用いられる。


○中篇
花街……カガイ・色町
戯場……ギジョウ・舞台。劇場
万金……マンキン・大金
水禍……スイカ・洪水による災害。水に溺れること。水難
犬張り子……犬をかたどったおもちゃ。子供のまよけ。
緞子……ドンス・絹の紋織物。室町時代に、中国より伝わる。

○後篇
家作……カサク・貸し屋
賃餅……チンモチ・賃銭を払ってつかせた餅
おにやらい……豆まき
産土神……ウブスナガミ・生まれた土地の守り神
修正会……シュショウエ・正月に寺院で行われる法会。吉祥を占う。
気ぶっせい……気詰まりなこと
川施餓鬼……カワセガキ・水死人の霊を弔うこと
一半……イッパン
半挿……ハンゾウ・湯水をそそぐための器。

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