作品紹介
鴨部五郎左衛門は癇癪の強い人で、いつも眉をしかめて唇をへの字なりにして、何もかも気に入らないと云いたそうな目であたりを見回す。我が強くて自分がよしと信じたことは中々後へ引かない。しかし癇癪があろうと我が強かろうと、藩政の実務にすぐれた才腕があるため無くてはならぬ人物の一人に数えられていた。しかし残念なことには彼には男子がなく、娘一人しかいなかったため選り抜きの婿を手に入れなければならなかった。五郎左衛門が婿にと目をつけたのは、同じ家中の番頭、内田覚右衛門の三男圭之介だった。
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