作品紹介
【小学館の名作文芸朗読】
魚津で生まれて初めて蜃気楼を見た帰途、汽車の二等車に同乗者は一人の男しかいなかった。四十歳とも六十歳にも見える男の荷物が気になった私は、向かいの席に腰を下ろし、見せてもらう。男は大風呂敷から額を取り出すと、窓に立てかける。その表面はかつて見たことのないような「奇妙」なものがあった。背景の粗雑さに比べて、押絵細工で出来た二人の人物の精巧さは驚くばかりであった。
魚津で生まれて初めて蜃気楼を見た帰途、汽車の二等車に同乗者は一人の男しかいなかった。四十歳とも六十歳にも見える男の荷物が気になった私は、向かいの席に腰を下ろし、見せてもらう。男は大風呂敷から額を取り出すと、窓に立てかける。その表面はかつて見たことのないような「奇妙」なものがあった。背景の粗雑さに比べて、押絵細工で出来た二人の人物の精巧さは驚くばかりであった。
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