作品紹介
学校を卒業しても就職もせず、みずからの理想郷を描いた売れない空想小説などを書いてうだつの上がらぬ日々を送っていた人見廣介には、学生時代、双子のように瓜二つだと言われた菰田源三郎という同級生がいた。その源三郎が癲癇のため急死したという知らせを受けた廣介は、莫大な遺産を持つ源三郎に成りすますという、途方もない悪心を起こす。癲癇死した者が埋葬後に蘇生する例が少なくないというのが、その根拠であった。菰田家の財力をもってすれば彼の夢見た理想郷を現実のものとできるのである。幾度もの逡巡を経て計画を実行に移した廣介は、緻密な作戦と忍耐力をもって、菰田家の所有する孤島の上に彼の理想とするパノラマ島を築き上げてゆく。蘇った菰田源三郎に成りすまし、多くの人を欺き続ける廣介であったが、どうしてもごまかせない相手は、源三郎の未亡人・千代子の存在であった。
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