作品紹介
公園の中の木馬館で「♪~ここはお国を何百里、離れて遠き満洲の……」などと、高らかにラッパを吹き鳴らすのが格二郎の仕事だ。好きな道として奏でてきたラッパが、今では家族の貧しい生活を支える仕様事なしの方便となっている。そんな格二郎のモチベーションを高めている原因が、回転木馬の切符切りとして働く十八娘のお冬の存在であった。おじさんの恋、などと言ってはいけない、彼には妻も三人の子もあるのだ。それでも、お冬の欲しがる流行のショールを買ってやったらどんなにか喜ぶであろう、喜ぶ顔を見るだけでいいのにと、財布に相談したりするある日、若い男がお冬のお尻のポケットへ封筒らしいものを、お冬に気付かれないように押し込んだのを目撃する。付文に違いないと思い、幸いお冬が気付く前に抜き取って開けて見ると、中には驚くべきものが入っていた。
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