作品紹介
「私」の友だちに、幼いころからガラスやレンズ、鏡などに不思議な嗜好を持っていた男があり、少年時代に彼の部屋を訪れると、不思議な鏡や、目の錯覚を利用した手品などを見せられたりしては驚いたものだが、やがて彼の趣味は、両親の遺した莫大な財産を注ぎ込んでどんどんエスカレートしていった。庭に天文台を作り、天体観測では飽き足りず、望遠鏡や潜望鏡を用いた他人のプライバシーの覗き見、顕微鏡と幻灯機とを組み合わせた不気味に巨大な映写などはまだしも、ついには自宅の庭にガラス工場を建ててしまった。そこで制作したあらゆる種類の鏡によって、彼の実験室は彼の狂気とともに限りのない鏡地獄へと化してゆくのであった。彼のたった一人の友だちとして、私は彼の行く末を案じていたのだが、とうとう末路は悲劇的なものに。
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