作品紹介
「私」が十年以前、十九の歳で嫁ぐことになった相手は、水際立った美男子でありながら、気むずかしくて女嫌いだという噂もあり、なにかと不安でしたが、いざ嫁いでみると、彼は私をたいそう可愛がってくれ、幸福な日々が続いたのでした。「変だな」と気がついたのは、御婚礼から丁度半年ほどたった時分でした。相変わらず私を愛してくれる彼でしたが、その様子に、偽りっぽい、妙に冷い空虚を感じるようになったのです。ふと思い当たるのは、彼が書見をするのだと言って土蔵の二階で長い時間を過ごすようになったこと。もしや他の女がそこに忍んできたりしてはいないかと疑って密かに探ってみたところ、そこで思いもよらぬ彼の“恋”を知ることとなったのです。
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