作品紹介
外務省書記官の夫人で、有名作家である佳子のもとには、毎日のようにファンレターが送られてくる。その日届いた分厚い一通は、手紙なのか、たまに送られてくるアマチュア作家による創作原稿なのか判別できないまま、二、三行目を通すうちに、その異常性、気味悪さにぐんぐん引き込まれ、先を読んでいくのであった。「奥様、」という呼びかけで始まるその文章は、一人の椅子職人からのもので、彼は自分の製作した椅子の中に入り込み、その椅子の中で数か月を暮らしたという、驚くべき内容のものであった。彼が入ったまま出荷された椅子はホテルのロビーに設置され、椅子と一体化した彼の上に座る女性に恋し、男性に憧れ、夜中には抜け出して盗みを働くという、常軌を逸した日々ののち、その椅子が今、どこにあるかと言うと…
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