作品紹介
あらゆることに退屈してしまった人たちから成るクラブの秘密めいた会合が、その日も「赤い部屋」で開かれていた。彼らは、犯罪と探偵の遊戯、心霊上の実験、特異な施設への参観など、さまざまのことを企画し、おこなってきた筋金入りの退屈者たちである。この日、初参加のT氏は、新入会員に課せられた定めに則って、自らの体験談を話し始めたところである。彼が語るには、自分こそ比類なき退屈者であったが、刺激を得られるすばらしい遊戯を発見し、それを夢中になって行ってきたという。それは何かというと、殺人であった。しかも、全く罪に問われない方法を次々と試してきたとして、いくつかの実例を詳しく述べてゆく。そして、ついには他人を殺すことにも飽き果て、最後の犠牲者として自分を選んだというのであった。
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