作品紹介
かつて学友であった野本氏宅を訪れて帰りの北川氏は、「勝った、勝った」と、勝利の言葉を噛みしめながら場末の街筋を歩き続けていた。三ヶ月以前、北川氏の住んでいた借家は、隣家からの失火がもとで全焼し、その折に愛妻・妙子が焼死してしまったのである。友人から伝えられた目撃談によると、一旦非難したはずの妙子は、何を思ったか燃え盛る家の中に再び入っていったらしい。そしてその直前に、一人の男が妙子に接触し、何かを告げたらしいとのことである。さらにその男は、誰かは特定できないが、北川氏の学生時代の友人の一人だという。それが、かつて友人たちの間でマドンナ的な存在であった妙子と北川氏との幸福な暮らしを嫉んだ陰湿な復讐であったと確信した北川氏は、復讐の復讐を決意したのであった。
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