作品紹介
むかし日本の国に、はじめて仏さまのお教えが、外国から伝わって来た時分のお話でございます。第三十一代の天子さまを用明天皇と申し上げました。この天皇がまだ皇太子でおいでになった時分、お妃の穴太部の真人の皇女という方が、ある晩、ごらんになったお夢に、体じゅうからきらきら金色の光を放って、なんともいえない貴い様子をした坊さんが現れて、お妃に向かい、「わたしは人間の苦しみを救って、この世の中を善くしてやりたいと思って、はるばる西の方からやって来た者です。しばらくの間あなたのおなかを借りたいと思う。」 と言いました。お妃はびっくりなすって、「そういう貴いお方が、どうしてわたくしのむさくるしいおなかの中などへお入りになれましょう。」とおっしゃいますと、その坊さんは、「いや、けっしてその気づかいには及ばない」と言うが早いか踊り上がって、お妃の思わず開けた口の中へぽんと跳び込んでしまったと思うとお夢はさめました。目がさめて後、お妃は喉の中に何か固くしこるような、玉でもくくんでいるような、妙なお気持ちでしたが、やがてお身重におなりになりました。さて翌年の正月元日の朝、お妃はいつものように御殿の中を歩きながら、お厩の戸口までいらっしゃいますと、にわかにお産気がついて、そこへ安々と美しい男の御子をお生みおとしになりました。召使いの女官たちは大さわぎをして、赤さんの皇子を抱いて御産屋へお連れしますと、御殿の中は急に金色の光でかっと明るくなりました。そして皇子のお体からは、それはそれは不思議なかんばしい香りがぷんぷん立ちました。お厩の戸の前でお生まれになったというので、皇子のお名を厩戸皇子と申し上げました。後に皇太子にお立ちになって、聖徳太子と申し上げるのはこの皇子のことでございます。
本作品は発表時の未熟な時代背景から、今日の社会では一般的でなく、不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。
しかし作品のオリジナル性を最大限に尊重し、なるべく当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。
本作品は発表時の未熟な時代背景から、今日の社会では一般的でなく、不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。
しかし作品のオリジナル性を最大限に尊重し、なるべく当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。
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