作品紹介
一七歳、秋のはじめ――
部屋は四畳、明窓の障子の向こうには二畳ばかりの池がある。
何百年もの古邸であるから、鼠だらけ、埃だらけ、草だらけ。
塾生と教師家族が住んでいる。
その夜は、塾で禁止されている小説をひっそりと読んでいた。
すると、障子の向こうでぱらぱら…と音がした。
耳を澄ますと、連続した調子で、ぱらぱら…
四五日後、風の黄昏時。家内には他に誰もいなかった。
惡寒のために床に就いていると、枕元でばたばた…と音がする。
頭を上げたが、誰が来たのでもなかった。
しばらくするとふたたび、しとしと…しとしと…
堪えられずに起き上がり、次の間、広間へと出た。
ほっと息をつき振り返ると、部屋の敷居をまたいで、
薄紅のぼやけた絹に搦まって、蒼白い女の脚ばかりが歩行いて来た。
部屋は四畳、明窓の障子の向こうには二畳ばかりの池がある。
何百年もの古邸であるから、鼠だらけ、埃だらけ、草だらけ。
塾生と教師家族が住んでいる。
その夜は、塾で禁止されている小説をひっそりと読んでいた。
すると、障子の向こうでぱらぱら…と音がした。
耳を澄ますと、連続した調子で、ぱらぱら…
四五日後、風の黄昏時。家内には他に誰もいなかった。
惡寒のために床に就いていると、枕元でばたばた…と音がする。
頭を上げたが、誰が来たのでもなかった。
しばらくするとふたたび、しとしと…しとしと…
堪えられずに起き上がり、次の間、広間へと出た。
ほっと息をつき振り返ると、部屋の敷居をまたいで、
薄紅のぼやけた絹に搦まって、蒼白い女の脚ばかりが歩行いて来た。
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