田辺一鶴・三方ケ原

数ある軍談修羅場のなかでも、この「三方ヶ原」は，「講釈は三方ヶ原に始まり三方ヶ原に終わる」と言われるほど定番中の定番。
元亀3年に行われ、のちに「海道一の弓取り」と呼ばれ天下人となる徳川家康が喫した生涯唯一の負け戦「三方ヶ原の戦い」に取材したものである。
この年の秋、本拠・甲州から京へ向けての進軍を開始した武田信玄は家康の守る浜松に迫る。
圧倒的な戦力を誇る武田の軍勢に対し家康陣営の軍議は迎撃・篭城二論に分かれて紛糾するが、まだ30歳を超えたばかりの若い家康は迎撃を決意。
配下の内藤三左衛門が物見に出て参戦諸将の旗印を読み尽くすことろが聞き所……と言われるが現代人にはいささか退屈なところも。
それを用語の解説や滑稽なくすぐりなどを適宜交えつつまた適当に割愛しつつ、分かりやすく語り尽くす。
「講談の本当の醍醐味は軍談修羅場にあり」と言う一鶴師渾身の一席。