マーケットの魔術師～日出る国の勝者たち～　Vol.28

「ロハスな視点：人生の目標と投資が交差する場所」

『株・かぶ・株』
『幸せなプチ投資家になる方法』
『ロハスな人の株式投資入門』などの著書で有名な田中久美子さんは、大手証券会社のカウンターレディとして12 年間活躍し、多くの個人投資家が資産を築き、またそれを崩壊させていく様を目の当たりにしてきました。
ときは1980年代末・90 年代初め、バブルの絶頂から失われた10年へ変遷する相場の過渡期で、証券会社の営業姿勢に疑問を感じていたこのカウンターレディは、ある投資家の、感動的な株式ポートフォリオに出会います。

＜足るを知るポートフォリオ＞
“貪欲に突き動かされる相場に売り向かい、恐怖に慄く相場に買い向かう”そんなサラリーマン投資家に出会ったことで、田中さんの株式投資に対する考え方は大きく変質します。「企業幹部で銘柄分析や投資戦略を錬る時間もないのに」と田中さんが評するこのサラリーマン投資家は、極に走る相場や後追いの投資家を客観視できる潔い投資家でした。この“足ることを知る”投資家は、田中さんにとって営業の対象に過ぎなかった株式相場を、もっと深遠で愛しいものへと変えました。その後、外資系証券に移り証券営業などの総合職、独立後にはIPO支援業務など、株式市場のコアな部分に触れることになった田中さんは、ファイナンシャルインストラクターとしてのセミナー活動も行うようになり、それまでとは異なる視点から個人投資家に対峙することになります。そして、必要なのは勝つことだけを目的とした投資戦略ではなく、新しい時代と自分のライフスタイルを“創造・支援する”投資戦略であることを知るようになります。ロハスが、もっと大きな視点で、もっと長期の視点で、投資の醍醐味と意義を教えてくれたのです。

＜ロハスという投資感覚＞
「環境と健康に関する問題意識が高いロハスな人々は、考えてみれば高コストなライフスタイルを選択した人たち」と語る田中さん。「有機栽培の野菜」、「循環性・天然性を意識した衣料」や「EMクリーニング」など、ロハスな生活の実態は価格的にも時間的にも高コストです。そこで、こうしたライフスタイルを維持（維持可能はロハスの主要な意識要素）するために、ロハスな人にとって投資がとても重要になります。ロハス的視点で考える世の中のおカネの流れ、投資銘柄の選択ポイント、投資の楽しみ方など、自分の生活の延長線上に浮かんでくる、“肩肘を張らない投資スタンス”は、ストイックで禁欲的な“儲けるための投資スタンス”とは対極的な投資家心理でポートフォリオを構築していきます。実生活に裏打ちされ、生活感と共にある、“田中久美子型銘柄戦略”は、ウォーレン・バフェットにも通じるシンプルさと仕掛けの狡猾さを備えています。数式やチャートパターンではなく、自分のライフスタイルから発想する投資スタイルがここにあります。

＜独自の発想＞
投資は夢であり、ジグソーパズルで描かれるそんな夢が“収益”の積み重ねで出来ているとすれば、小さなピースで緻密な夢を描く投資家も、大きなピースで大胆な構図の夢を描こうとする投資家もいるのです。ただ、それぞれのピースはそれぞれの投資家の発想の中から生み出されるのであり、他人のアイデアを拝借することで、（長期的に）良い結果が生み出されることはありません。その意味で、田中さんが実践する“ロハス”という発想は、ライフスタイルを背景とした投資戦略から金融知識の啓蒙活動まで、一貫して、網羅的に彼女の世界をまとめ上げています。生活実態を伴う思想・構想が卓上の理論に勝るのは、（W・バフェットが住む）ネブラスカ州オマハとニューヨークのウォール街との隔たりよりも明らかです。夢を描ける投資戦略は、それぞれの投資家の中にこそあるのです。

このインタビューは、“ペンギンの貯金箱をくれる所”として、証券会社に違和感を持たずに育った少女が、軽い気持ちで相場の世界を垣間見ていくなかで、いつしか投資に開眼する、というお話です。さらに、投資教育や人生の目標や興味など、大切だと思うものが一つひとつ不思議に交わり、“自然体で夢が実現”されるという自身のライフスタイルが語られていて、エネルギー満載のインタビューになっています！