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聴き放題対象

音の歳時記 -「日本の匠」たたら吹きと刀剣-

ナレーター木村勝英

再生時間 00:17:34

添付資料 なし

聴き放題配信開始日 2024/9/12

トラック数 1

購入音源の倍速版 なし(アプリでの倍速再生は可能です)

作品紹介

音の歳時記 11月 「日本の匠」-たたら吹きと刀剣- 17分33秒 朝、島根県仁多郡奥出雲町に位置する日刀保の高殿(たかどの)という天井の高いたたら作業場の建物の戸が開いた。内には長さ3メートル、幅1メートル、高さ1メートルを越える大型の炉が構えている。その炉の上には神棚が据えられ、金屋子(かなやこ)神といわれる女神が祀られている。鉄作りの守り神である。 砂鉄をこの炉で木炭を用いて比較的低温で還元し、純度の高い鉄を生産する。既に近くの山や川から木炭と砂鉄が運ばれていた。ここから「日本刀」になる「玉鋼(たまはがね)」が生まれるのである。 別棟から炉に空気を送り込むふいごの管から息づかいが聞こえる。炉の周りのまだ柔らかい粘土を叩き、かたちを次第に整えていく。3昼夜通して純度の高い玉鋼をつくる日本独特のたたら製鉄法「たたら吹き」の始まりである。 日本を代表する村下(むらげ)の「木原明さん」の「たたら吹き」。そして木原さんの師であり、匠の神とたたえられた村下の「安部由蔵さん」が歌う「たたら唄」が高殿に響く。 炉の前に立つ二人の村下。大変貴重な「日本の匠」の共演である。 たたら操業の成功の秘訣は「一釜、二風、三村下」また「一土、二風、三村下」などと言われ、村下は「たたら操業を行う長」である。 火をよみ、風をよみ、砂鉄の煮える音をよむ。「良い鉄を吹くには炉の火の色を見る」と、長老の安部由蔵さんはいう。燃える炎の色別を細かく観察しながら、「たたらの唄」を歌いはじめます。 傍らで木原さんの長老を気遣いながら竹製のザルに入った砂鉄を振るい炉に投入する姿が厳しくまた優しく炎の向こうに見え隠れする。 連日連夜「炎の色、風、砂鉄の溶ける音」を読みながら「たたら吹き」の操業を図るという。 高く燃えあがる炎の色彩、大地から深く伝わる重低音。横っ腹の赤く熱せられた「ほど穴」からは吸ったり吐いたりする火風と共に明滅する姿は「生きもの」が呼吸しているかのようだ。 そして三日三晩、実に70時間に渡って燃え続けた。 4日目の朝がきた。職人たちが炉を崩し始めた。炉の底に姿を現したのは真っ赤に燃えるケラという鋼のかたまり。鉄のしずくを垂らしている。ケラは不純物の少ない部分が玉鋼と呼ばれる。 この玉鋼が日本刀になるのである。 出雲では江戸末期、藩の倉庫は港に立ち並び、米穀と鐵などで港は賑わっていたという。その繁栄の証として「安来節」が歌われたという。「安来千軒名の出た所、社日桜(しゃにちざくら)や十神山(とかみやま)、十神山から沖見れば、何処の船かは知らねども、滑車(せみ)の下(もと)まで帆を巻いて、ヤサホヤサホと鉄積んで、上(かみ)のぼる」と記してある。 村下の安部由蔵さんはこの詩の後半部分をこのように変えている。 「十神山から沖見れば、何処の行くは知らねども、じゅうっと、たたらの俵荷を積んで、ヤサホヤサフと、上(かみ)のぼる」と歌っている。玉鋼は北前船で安来の港から全国津々浦々に運ばれて行った様子を匠の心境か、たたらをこよなく愛し歌ったのでしょう。 安来節の正調の歌詞だけでもおよそ150首あるという。周縁の歌詞となると数えきりがないほどあるといいます。船乗りや芸人たちが全国各地に広めていったのでしょうか・・・ これまでの音源は「日本美術刀剣保存協会」日刀保たたらの協力で1994年に収録したもので構成しました。 同じ年、雪が降る新潟。「大野義光刀匠」の協力で工房を訪ねた。 あの、たたら吹きで作られた玉鋼が匠の手で日本刀になるのだ。 匠は刀剣製作に機械を一切使わず全て自分の経験と直感それに肉体の記憶を信じて行うという。 まず、刀づくりは炉に火をおこすための準備から始められる。 燃料の木炭を用意し火打石で火を起こす。まもなく和紙に新鮮な火種が付いた。炉には風を送るためのふいごが備え付けられている。匠はこれをまるで息をするかのように使い、次第に炉の温度を上げて行く。しばらくして玉鋼が真っ赤に熱せられた。最初の工程は「打ち延ばし」。匠二人で作業を行う。大野刀匠が熱せられた鋼を抑える、もうひとりの匠が重厚なハンマーを持ち上げ打ち始めた。 やがて匠は鋼を小さな断片に打ち砕き、刀を割れにくくするための工夫である。炉の温度を摂氏1、300度近くまでに上げてゆく。いよいよこれから「鍛錬」という打ち延ばしに入る。冷却、加熱、再び打つ。次は「繰り返し鍛錬」。もっとも硬い鋼を作り出す工程である。日本刀が折れにくいことの最大の理由は織物の手法にも似た折り返し鍛錬にあるという。この工程は15回も繰り返す。 外側には硬い層、内側には柔らかい層の2重の構造が折れにくく曲がりにくい日本刀特有の強靭さを作り出すという。 いよいよ刀剣の頂点である焼き入れの時がきた。その前に、刀には「土置き」という刀身に刃文の意匠を施す。土を変化つけて刀身上に描きだすのである。それは熱の加わり方に変化を起こさせる仕掛けである。もちろん「秘伝」。その技は焼き入れとともに刀剣製作の最終段階、そして修正する事の出来ない最重要工程である。 焼き入れ温度は摂氏800度。刀身の色の変化から焼き入れのための温度を判断する。それは「満月の朱色」だと大野義光刀匠はいう。 命を吹き込む「焼き入れ」。 真っ赤に熱した刀身を焼舟という冷却水槽に入れた。その瞬間800度から20度へと急激な温度変化によって、刀はいったん刃先の側にしなったのだ。その後、刀は逆に弧を描いていった。 同時にふしぎの叫び音を発し刃文が現れ刀は神秘に満ち溢れた。 その神秘を支配してきたのは「 匠 」と呼ばれる職人の技である。

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