作品紹介
「実」(みのる)
私は名前を呼び、鍵盤の上に所在無く置かれた実の手に自分の手を重ねた。
微かに痙攣する滑らかな手の甲を、指に力を入れて圧する。不協和音が響板を滑り、全ての音が絨毯敷きの床に転がり落ちたあと、私はたまらなくなりもう片方の手で実の頬を耳ごと掴んだ。
「さく......」
ら、という音は私の唇の端で、水の音になって溶けた。
拒まれるわけがない。拒むわけがない。だって実はそういう人だから。生まれて初めてのくちづけは、思っていたよりもあっけないものだった。
新学期、突如学園に現れた天使のように美しい外部生、矢咲実(やざきみのる)。黒川さくらは一目で実に心を奪われる。彼女ならきっと、私をとりまく運命から、私を引きはがしてくれるはず―--。
愛する人とどこかへ逃げていきたい。少女たちが抱く、甘美なまでの絶望と夢の物語。
文芸あねもねR制作委員会
私は名前を呼び、鍵盤の上に所在無く置かれた実の手に自分の手を重ねた。
微かに痙攣する滑らかな手の甲を、指に力を入れて圧する。不協和音が響板を滑り、全ての音が絨毯敷きの床に転がり落ちたあと、私はたまらなくなりもう片方の手で実の頬を耳ごと掴んだ。
「さく......」
ら、という音は私の唇の端で、水の音になって溶けた。
拒まれるわけがない。拒むわけがない。だって実はそういう人だから。生まれて初めてのくちづけは、思っていたよりもあっけないものだった。
新学期、突如学園に現れた天使のように美しい外部生、矢咲実(やざきみのる)。黒川さくらは一目で実に心を奪われる。彼女ならきっと、私をとりまく運命から、私を引きはがしてくれるはず―--。
愛する人とどこかへ逃げていきたい。少女たちが抱く、甘美なまでの絶望と夢の物語。
文芸あねもねR制作委員会
チャプター
# | タイトル | 再生時間 |
---|---|---|
1 | 水流と砂金 分割版1 | 00:21:56 |
2 | 水流と砂金 分割版2 | 00:26:46 |